数千枚の写真を見て、いろいろ考えている内に、「目のまえの、いつか」という言葉が浮かんできた。
そしてそれをそのままスライドショーのタイトルにすることにした。
写真を見て思ったのは、これはわたしの記憶なんだなということだ。
写っている写真の風景や人々がわたしの記憶ということは勿論そうなのだけれど、それだけではなくて、
その被写体に惹きつけられたおおもととなる、更に古いわたしの記憶も写っているんだなと思ったのだ。
自分が過去に出会った人や風景、人から話を聞いて想像したもの、見た映画や読んだ本、子どもの頃の体験だとか、自分で覚えているつもりもない、普段意識下に眠っているような記憶。
そういうものに無意識に左右されて、一瞬の内に、被写体やアングルを選んでいるのだと思う。
そして、自分が撮った写真を見ると、その写真がまた記憶として刻まれる。
そう考えてみると、写真というのは記憶を補強、増幅させる作用があるなあと思い、面白いけれど、少し怖いような気もしてきた。
スライドショーで、他の人達にそれを見てもらうということは、わたしの記憶が、見てくれた人達の記憶としても
残るということになる。
もちろん、これは写真に限ったことではなくて、例えば、美術や音楽、文学、それに料理などにも当てはまることだと思うのだけれど。
でも、スナップ写真は、創作の余地が少ないゆえに、よりその性質がストレートで強い気がする。

もう一つ考えたのは、写真に撮った場所や人に流れる時間という意味でのいつか。
これは、わたしの癖だと思うのだけれど、風景や人を見るとき、今の状態を見るのと同時に過去や未来も重ねてしまう。
写真に写るのは今の姿だけなのだけれど、今が過去や未来も内包していることを意識した。

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写真と記憶について(スライドショー「目のまえの、いつか」で考えたこと)
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