東夕暮れのローズバレー(奇岩の連なる渓谷)を観光した時には、
巨大に絞り出されたような形の岩が連立している光景に圧倒されたこと以上に、
辺りの草原が、夕日に染まって風に揺れ、
空に雲が流れ、そこに気球がやってきたり、
岩肌は夕日のもと、何層ものピンクに染め分けられ、
休憩に出されたミントティーはいい匂いを漂わせながら、コップの中で冷めていく・・・
そんな風景と自分の五感や気持ちが溶け合い、境目がなくなっていくような感覚が心地よかった。
そして、時間が流れて行く様子をきれいだなあと思った。

パムッカレの石灰棚の景観も印象に残っている。
見渡す限り、白いバター飴のような質感の、
自然に作られた石灰の受皿が、棚田状に積み重なった、丘陵地帯。
受け皿一つ一つに鉱水が溜まり、真昼の青空が映りこんで、水色に輝く。
夕暮れにはその中に、落下していく太陽が反射し、更にきらきらまたたく。
登っていくと、幻想的な石灰棚の下には、西日の差し込む村が広がり、
木々や家があたたかな色に照らされていて、
神秘的な白い丘と、のどかな生活風景が、
違和感なく寄り添っている様子に心をうたれた。

更に登ると草原が広がり、古代都市の跡地があった。
その中の円形競技場跡に腰かけていると、古代の人々の暮らした遺跡、
鉱水がゆっくりと形作った石灰棚、
古代の人々が暮らしていた頃と、殆ど同じかもしれない草原の草木、
現在の人々が暮らす村、
そのすべての上に広がる空・・・
それぞれに流れる、スピードの異なった時間が交差しているのを感じて
大きなものに繋がっているような安心感と、
この一瞬をとても儚く思う、切ない気持ちの両方を感じた。
(つづきを読む)

26. いろんな時間が寄り添う風景〜カッパドキア、パムッカレ(トルコ)