実際旅を終えて、札幌に戻ってきたけれど、新しい仕事を探し、再就職したり、引越をしたり、
日々いろんな人と、出会いや別れを重ねているわけで、実は旅の気分に明確な境目はない。
毎日泊まる場所を考えたり、明日はどこにいるか分からないといったことはないから、旅の時より安定感があるとは思うけれど、
震災などを見てしまうと、それも錯覚の上になりたっているだけかもしれない。
どちらにしても、旅の後も、楽しいことはいくつも自分を通りすぎていくし、それは今だにジャマイカの海で見た風景に重なる。

宿に戻り、ぞんぶんに昼寝をして、庭のハンモックにゆられてみた。
ちょっと車を飛ばして、天国のような美しい海に行って、ただぼおっとして、風通しと日当たりの良い部屋で昼寝。
旅をしていると、そんなことを何回も体験して、これがあたりまえのように思えてくるけれど、
日本に帰ったら、ただそれだけのことが、滅多にできないことだったということを思い出す。
洗濯物がたなびき、離れた場所には、生まれたばかりの赤ちゃんをゆらす奥さんの姿が見える。
ラジオから流れるゆるいレゲエ。
少しづつ夕方に向かう空。

そこにいると、子どもの頃、夏休みにおばあちゃんの家にいた時の気分になった。
日本を離れて、こんな遠くのジャマイカ人の家で、と思ったら不思議だったけれど、
雲の様子が変わっていくのや、南国の植物の大きな葉っぱが風に揺れる様子を眺めていると、
押入れから出てきた、色褪せた写真を見ているような懐かしさを感じ、
あたたかなものに包まれているような気分になって、
いつまでもここでこうしていたいなと思った。

17. 予知とノスタルジア〜ライムキー(ジャマイカ)