洋服を作りつづける劇団、シアタープロダクツ

『Theatre PRODUCTS 展示会』展
2001年10月25日〜11月2日/東京・港区のリトルモア・ギャラリーにて

わたしたちにとって、いま、洋服ってなんでしょう。

暑さ寒さをしのぐもの、からだを人目から適度におおうもの、という基本は生きているものの、あらためて洋服とはなにかと考えてみたりすると、その基本から人間はずいぶん遠くまで来てしまったという気がします。あ、人間はというのはおおざっぱすぎですね。アフガニスタンの人々はこの冬を越すための衣料が足りないそうですから。

いまのわたしたち、たとえば日本人にとって、洋服はたいがい「できあがったもの」を買ってきて着ます。でもちょっと前、昭和20年代、30年代(1950年代 - 60年代)に子供時代をおくった人々の中には、お母さんのつくる服を着ていた人もけっこうな数いたと思います。お母さんとおそろいのワンピース、兄弟姉妹でのおそろいの服、洋服の供布でつくった帽子やバッグなど、ふつうに街でみかける風景でした。

1970年代に入ったくらいからでしょうか、地域によっても差があると思いますけれど、既製服のバリエーションがどんどん増えていって、着ること自体をたのしむ服がいっぱい出てきました。日本人のデザイナーたち(ケンゾー、三宅一生など)がパリでデビューしたり、海外のプレタポルテが日本に入ってきたりと、洋服をめぐる世界がぐっと開けてきた時代です。服を売るショップもたくさんできました。このあたりから、洋服は「できあがり」を買って着るもの、という生活スタイルが定着したように思います。

そして2001年、服をめぐる世界にまたすこおし、異変が起きはじめているようです。「洋服を作りつづける劇団、シアタープロダクツ」は、そんな新しい時代の空気を感じさせてくれる洋服屋さん/劇団です。この秋、東京・南青山のギャラリーで開かれたデビュー・エクジビジョンを見て、洋服の世界の、未来への小さな窓が開かれたように思いました。

  洋服を作り続ける劇団ができました。

  衣服の生産、購入をへて、それを着るという行為は最大のスペクタクルだ。
  身体と服の出会い、そしてその最初のよろこびを取り戻すために、
  あるいは新たに発明するために、
  今日も明日も幕を開け、この劇をずっとずっと続けます。
  そして、あなたを、この街をまきこんでゆきます。


これはエクジビジョンのためのダイレクト・メールの中の口上です。「最初のよろこびを取り戻す」「新たに発明するために」「あなたを、この街をまきこんでゆきます」これらの言葉にひかれて、わたしはギャラリーに足を運びました。服との、着るという行為との新しい出会いが見つけられるかもしれない、という期待を胸に。

そこでわたしが出会ったものは、子供のころ母親がつくってくれたワンピースに初めて袖をとおす気持ち、に少し似ていました。できたての、自分が手を通すことによってはじめて完成する服。そんなイメージです。たとえばシアタープロダクツのTシャツはこんな風です。

おおきな白いレース布に何枚ものTシャツが埋めこまれていて、レース布のあいだにはきれいなピンクとグリーン、あるいはイエローとブラウンといったフェルトシートがはさまれプレスされています。服を着る人はまず、このシートの中から自分の好きな部分を選びます。色のフェルトシートのかかり具合や、白レースの透ける場所を予測しながら、ここという場所(Tシャツ)を陣地どりするようにきめていきます。それが決まったら、おおきなシートから自分のTシャツを自分の手でゆっくりとはがしとっていきます。Tシャツの形をした1枚のシートができあがります。そのままだと平面の布のままなので、次にしっかりとプレスされている色のフェルト地と白レース地をはがして、自分の身体をいれるすき間をつくっていきます。ベリベリとはがしていくことで、フェルト地に自然な起毛がおこり、ふんわりした質感とやさしい色合いがレース地をおおいます。

シートに埋めこまれていたときに隣あっていたTシャツの袖部分が、こちらの前身ごろの一部にかかっていたりすると、そこはレース地のまま透けていたりします。しらない誰か、隣あったTシャツを買っていった人の袖で、こちらの胸元から欠落した色(もっていかれたフェルト地)は輝いているのです。どんな風だろう?と想像してみるだけで、なにかとても詩的な気分になります。素晴らしい発想を、だれかと共有しているような愉快な気持ちになります。

このTシャツに身体をいれてみて感じるのは、色やテクスチャーの美しさをまとう喜びとともに、とても自由で開放的な発想に身をつつむ楽しさと、そこから湧いてくるエネルギーを自分の中に発見することの驚き。着ることで、元気でクリエイティブな気持ちになれ、クリエイティブな自分をもっと発揮したくなり、人にもこのことを伝えたくなり、街へ出ていって自分に起きたことのすべてを公開し、その反応を確かめたくなる、そういう服なのです。

1枚の服がつくられ、だれかの手にわたり、その人に着られ、街にでていく。この光景、プロセスの全体が、洋服を作りつづける劇団「シアタープロダクツ」の服には、あらかじめ埋めこまれていると思いました。その意味でシアタープロダクツは、劇団なのだなぁとあらためて感じます。

2001年11月20日(火)午後12時
大黒和恵・editor@happano.org

Theatre PRODUCTSの劇に出会いたい人は、2002年にいくつかの公演が予定されているそうなので、足を運ばれてみてはいかがでしょう。詳細は、Theathre PRODUCTS(tel./fax: 03-3403-7690)までお問い合わせください。

Theatre PRODUCTS 2002年公演予定

Theatre PRODUCTS 本店開店記念展

東京公演
2002年2月8日(金)〜3月20日(水)
場所:南青山 リトルモアギャラリー内敷地

大阪公演
2002年2月22日(金)〜3月10日(日)
場所:gallery(gm)

「Theatre PRODUCTS +MOST+ PROGETTO」
2002年3月18日(月)〜4月13日(土)
場所:渋谷 PROGETTO

「Theatre PRODUCTS 興福寺」
場所:長崎県 興福寺(国指定重要文化財)
2002年8月18日(日)〜8月20日(火)

その他Theatre PRODUCTSの服が存在する全ての場所で、さまざまな公演が行なわれるそうです。
お問い合わせ:シアタープロダクツ tel./fax: 03-3403-7690
http://www.theatreproducts.co.jp/


シアタープロダクツ:洋服をめぐるパフォーマティブな作品づくりをしていた『カプセルリ』の武内昭、中西妙佳と、英国で移動映画館のパフォーマンス活動をしていた金森香の3人が出会い設立された、70年代半ば生まれ3人によるユニークで若い感性のカンパニー。