_「star quilt」発売を祝って_
受け継いできたものに感謝し、そこに自分を映して未来につなげる歌をうたう。

「star quilt」 吉本佳代
(2004年11月21日/ユニバーサルミュージック)


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友人の吉本佳代さんが2枚目のミニアルバムを出しました。「star quilt」というタイトルです。とてもすばらしい作品集なので、紹介したいと思います。

吉本佳代さんとは、もともと歌が縁で友だちになりました。二人の共通の友人がいて、その人が最初のデビュー(ミニ)アルバムをわたしに紹介してくれたのがきっかけでした。「lost and found」というデビューアルバムをわたしは繰り返し聴いて、吉本さんのうたう歌のファンになりました。(あとで聞いた話では、吉本さんのほうでも、葉っぱの坑夫のサイトやチャップブック「糸ごよみ」を読んだり、友だちに紹介してくれていたそうです)

うた、というのは、人間の声からできていて、それはメロディーやリズムやハーモニーをともなってわたしたちの耳にとどきます。またたいていの歌には歌詞があって、どこかの国や民族の言葉によってあらわされた詩の世界も同時にとどけられます。詩の世界と、音の世界。この二つがひとつになって、まず耳から吸収されます。はっきりとした歌詞がない場合でも、歌にはどこか詩の世界が背後にあるように感じられることも、歌の不思議さであり、歌のすばらしいところだとわたしは思っています。

吉本佳代さんの歌には、そういう「うた」というメディアがもっている不思議さと、どこから来るのかわからないけれど確かにその歌によってこの世に生み出されるもの、powerやenergyのようなものを感じます。実在するもの、として歌が感じられるのです。声の中に、節まわしの中に、ことばの紡ぎ方の中に、そして楽曲の中に、切実さをもって強くくっきりと、その実在感は現われています。だから聴く者は、歌と正面から向き合うような気持ちにさせられるし、そのことによって、吉本さんの歌の世界に誘われ招かれるのだと思います。

わたしが吉本さんのうたう歌が好きになった理由のひとつに、歌の発語のセンスの素晴らしさがあります。それはたぶん、吉本さんが常日頃から(言葉を使って)ものを考える人であり、自分の考えを(言葉によって)的確に表わし、それを人に伝える術をもっている人だからでしょう。また洋楽のリズムを天性としてからだにもっている人のように見えるので、そのことも歌の中の発語のセンスによく働いているのかもしれません。

「star quilt」のいくつかの曲は、使われている楽器の編成やヴォーカルの歌詞のない部分などに、ほのかにエスニックでプリミティブな香りがします。アメリカ・インディアンたちの大地の色だったり、イヌイットの人々が仰ぐ空の広さだったり、もしかしたらもっと身近なシベリアのトゥングース族の笑い声だったりするのかもしれません。また70年代の日本のフォークロックの良質な部分をDNAとして受け継いでいるような印象もあります。歌が好きで、世界中のさまざまな歌を、ポップスに限らず、新しいものも古いものも、よく聴いて楽しんでいるそうなので、自然とそういうセンスが蓄積されてきたのでしょう。

とても今の歌でありながら、とてもオリジナリティのある歌でありながら、過去に紡がれてきたたくさんの歌を大切に思い、それぞれの歌う心の背景にも思いをはせながら、自分もその大きな流れの一部であると感じてそこに歌を解きはなっていく、そういうシンガーとしての姿勢がよく伝わってくる歌声だと思います。だからどんな歌も、ときに傷心の歌をうたっているときでさえも、未来を、前進を感じさせて、聴くものをより良い方向へと力強く導き、元気づけていくパワーがあるのだと思います。

大黒和恵
(2004年11月22日 午後6時30分)

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「star quilt」 吉本佳代
(2004年11月21日/ユニバーサルミュージック/1800円)
作詞作曲:吉本佳代
1. 旅人
2. 時は、いま
3. homura
4. ほしのみちゆき
5. nostos
6. 青い星の子

※全国のCDショップ、amazon.co.jpなどで発売中。
Tower Records では、「アコースティックなサウンドにフォルクローレ的エッセンスを詰め込んだエバーグリーンな雰囲気」などの紹介文が載っていました。

吉本佳代 プロフィール:
富山市在住。1997年にユニットthe greenhornsで活動を開始。2002年よりソロとなる。生まれ育った自然の美しい地に暮らし、日々感じたことを歌として紡いでいる。

スターキルトとは:
平原インディアンのコミュニティで、子どもが生まれるときに、住人たちがその子のために針を通して作るキルトのことだそうです。ひとりひとりが針を通すことで、その子の一生に関わりを持って生きていくという意味があるそうです。


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