編む女(ひと)、そして現代的なデザイナーとしての、ソニア・チャウ

八丁堀8- factory/東京デザイナーズブロック・セントラルイースト
2003年11月14日(金)


昨日、八丁堀の東京デザイナーズブロック(TDB-CE)に行ってきた。今回は8- factoryで展示をやっているソニア・チャウ(Sonia Chow)さんに会うため。ソニアさんはカナダ東部の出身で去年の8月に日本に来た。グラフィック、ファーニチャー、テキスタイル、アート作品などデザイン、ものづくりに関する幅広い仕事をしている人。今回は「ウニ」型ライト(ニックネーム「ウニラ」)の展示をしている。ビビッドな色の人工素材のコードを編んで造ったもので、編み終わりの端っこを切り落とさずに残してある部分がちょうど、ウニの棘のようになっている。キュートでポップでキッチュで楽しさにあふれている。大小いろいろあって、わたしが行ったときソニアさんは、直径1m メートル近くありそうなブルーの大型ウニラを編んでいた。なんと素材はチューブだった。

オブジェの他に、グラフィックやファーニチャー、ジュエリーなどの仕事のポートフォリオをディスプレイで見せてもらった。カナダでは学生時代からデザインの仕事をしていてもう10年になるとか。扱うデザインの幅広さにも驚いたけれど、一つ一つのデザインのコンセプトがはっきりしていて必ず面白いアイディアが込められているところに感動した。それを一つ一つていねいに説明してくれる。明確なコンセプトと自分の作品をプレゼンテーションする的確な言葉をもっているデザイナー。すばらしい。

ファーニチャーデザインでは馬型のロッキングチェアやジェリー感触のソファー(jello chair)が印象に残った。木のロッキングチェア(rocker)は子どもの揺り木馬のおもちゃから発想を得たそう。またがって座り左右に、前後にゆらゆらさせて楽しむ。こんな椅子に座っていると面白い発想が浮かびそうな気がする。もう一つ木製の「ゆうれい椅子」(phantom chair)は座面と背もたれがバネで連結されていて、座った人は好きなだけうしろにもたれ掛かることができる、というコンセプトを聞いただけで笑ってしまう遊びの椅子。ソニアさんのデザインは見た目も楽しいけれど、使ったときにその人がどんな風に感じるか、どれだけ楽しめるかが大切な要素になっているみたい。ここ何年かの間に見られるようになった、ユーモアを基調にしたファーニチャーデザインの傾向をくんでいるようにも思える。

ファニチャーデザインはプロトタイプだけのものが多いが、造るときは木工でも人工素材でもソニアさん自身の手で造る。編むこと、手でつくること、を心から楽しむデザイナーなのだ。具体的に素材を選び、素材を手に感じながら作り上げていくことに楽しみを見い出しているのだろう。またその過程で新たなアイディアも生まれてくるのに違いない。

ソニアさんは今、日本の古い街並の残る八丁堀に住んでいる。日本の伝統的な手細工を学んでみたいそう。また言葉にも関心があるそうで、母語の英語のほか、フランス語、ロシア語、イタリア語を学び、今は日本語を習得中とか。自分の能力や興味を分散的にではなく全体として作品の中に投影する、ソニアさんはそういうタイプのデザイナーなのだろう。頭脳と、ハートと、手と、言葉をつかって。

(このテキストは2003年11月15日のhappano journal_Jの記事に加筆したものです)


ソニア・チャウ:
カナダ出身のデザイナー。ソニアの作品はグラフィックとファーニチャーにおいて18の賞を受賞しています。またカナダ国立ギャラリーコレクション(オタワ)に作品が収録されています。NSCAD(ノヴァ・スコシア・アート&デザイン大学/カナダ)視覚コミュニケーションプログラム学士。2002年8月より日本に在住。
ウェブサイト:www.soniachowstudio.com

Photo credits: All photos of the work are by Sonia Chow.
The photo of Sonia weaving is by Tadashi Iwamoto.

Images and furniture design are (c)Sonia Chow (2003, 2001, 1995, 1994). All rights reserved. These images may not be reproduced without the written permission of Sonia Chow.

東京デザイナーズブロック・セントラルイースト(TDB-CE)とは、デザインに関わる分野のアーティストたちの展示&イベントで、東京23区の東部地域(築地、八丁堀、神田など)で、2003年11月8日〜16日に開催されました。街の空きビルや店鋪、カフェなどの空間を使っての催しで、今年は第1回目。葉っぱの坑夫も、KOTOBAKOという言葉のプロジェクトの方に誘っていただいて「シカ星」の詩をball cafeにて展示しました。TDB-CEのオフィシャル・ウェブサイトは、こちら

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uni series



uni








rocker





jello chair







phantom chair