最後にあげたい必見の水の景勝地はトゥーレアリ地帯、あふれんばかりのアシ(Juncus)が活気のないゆっくりした流れの中に生えている。トゥーリーと呼ばれるアシは、濁った茶色の水の中で、冬はうすぼんやりと白く、夏には毒々しい緑になる。アシの根床は黒ずんだ水たまりに、朽ちかけた柳の木立の中に、曲がりくねった狭い溝や沈下した路に侵入する。トゥーリーはどんな場所でも信じられないくらいぎっしりと生え、水上に人間の背丈くらいで伸び上がり、牛も、それどころか、どんな魚も鳥もそこには潜り込めない。古くなった茎はゆっくり朽ちていき、それが積み重なる重さで固まり、アシの根床は沼地になる。湿原にアシが小さな島々を生み出し、埋め立て地に仕上げるまでには相当な年月がかかる。押し出された水は深い水路を掘り、固い土の端を噛み切る。

トゥーレアリ地帯は神秘とマラリアの毒気に満ちている。それでそこを探検すると言いながら、いまだ果たしていないのだ。それは心躍る神秘にちがいない。だから人は、赤い羽のクロウタドリが三月の天気のいい朝に、その神秘を賛美する歌声を聞こうとするのだ。たくさんの群れが、無数の群れがそれぞれに、乾いたサワサワいう茎の間に隠れている。クロウタドリはトゥーリーの茂みの奥深いところに、小さなアーチ状の通り道をつくっている。交尾のお天気になれば、谷間を横切っていく、甲高いフルートのような鳴き声を聞くだろう。

 野生の鳥類、ガーガーと騒ぐ鳥の群れは、トゥーレアリ地帯に巣をもつ。浅瀬の近くを通れば、いつもお椀の羽をもつアオサギが飛び立っていくところに出くわす。冷え冷えとした夜にはマガモの雄たちが鏡のような水場から声を上げ続け、サンカノゴイのうつろな鳴き声が水路に沿って流れる。見慣れない遠来の鳥がサフラン色の秋空から降りてくる。昼のあいだずっと、上空にぼんやりと、素早い動きで羽を打つ姿が見える。そして日が暮れると、サギの長い滑空が明滅する。夜にはガンが行き過ぎる声に、起こされるかもしれない。知りたいと願っても、アシの沼地が飲み込んだ鳴き声からは、一つの言葉さえ聞きとれない。そこで何をするのか、どうやって暮らすのか、何を見つけるのか、どれもトゥーレアリ地帯の秘密なのだ。

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