わたしの女神
ときに女神はわたしを見捨てる
花を散らしたピンクのシフォンをまとい
ギリシアの古代の街からやってくる女神は
イタリアで壷に描かれ、目をさませば
気が向いたとき
カトマンドゥまでぶらぶらと散歩する
ときに、わたしの女神はガネーシャ神で
わたしの肘の上にすわって、物語のあれこれを
わたしの与り知らない話を、ふりそそいで
書き取らせる。その突然やってきた言葉の
モンスーンの中、わたしを使者に選んでくれた神に
無言の感謝の言葉を返す
だらだらとした午後、暑い庭で
ガネーシャは昼寝をしている。電話が鳴る
でもそれはわたしのギリシアの女神ではない
借りる家を探している、ただの女の客
もうしばらく、わたしはここにすわって
女神を呼び起こそうとする、が、女神が
行ってしまったなら、鉄のベンチにこしかけて
ゴボゴボッとパイプを一気に流れる水音に
耳を傾けながら、両の手首を開き、
金の鉱脈をあてるまで
言葉で手首を切り裂いていく
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