「音楽が必要だ」
 「何かもってこようか?」
 「たのむ」
 官能的で、軽い音楽、幻想的な感じのものが合うんじゃないか、とぼくは考えた。
 「ドビュッシーの『戯れ』と『牧神の午後への前奏曲』は?」
 「いいね」
 ぼくはアームチェアに沈みこみ、アパートの劇場のただ一人の観客となった。次の幕を待つ聴衆の気分だった。
 突然音楽が鳴って、ぼくは我にかえった。流れてくるドビュッシーの優雅なアラベスクに身をまかせた。ぼくは目を閉じて音に浸りたかったが、ショーは音だけではない。
 Gはぼくの方にむかって言った。「そこにいないみたいにしていてくれ。きみの声や姿はみたくないんだ。きみの存在が感じられればいい」
 最後のひとことに従って、ぼくは不安を感じつつも静かにしていた。上着を脱ぎ、シャツを脱ぎ、Gの動きはなめらかに進んでいった。見たことのない不思議な振り付けはやわらかく、空気のように軽かった。
 ついにぼくは彼の上半身を、シャツがすべり落ちて、スポットライトに輝く白くなめらかな肌を目にした。
 Gの動きはさらに確信に満ち、手をからだにすべらせ、やさしくなでてみせたりした。そしてゆっくりとその場をまわると、じっと見据えているぼくにからだをさし出した。スポットライトの光の中、動きがつくる影とGの肌がうごめき戯れ、奇妙でシュールな世界を描いていた。

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