日本時間15:00

コロンビアのポップシンガー、シャキーラが決勝戦の前にトーナメントのアンセム「ワカワカ(This Time for Africa)」を歌うという。どんな歌だろう。欧州チャンピオンズリーグの決勝でも専用のアンセムが歌われるが、ちょっと仰々しくて古くさくて、でもあの大観衆の中で、ヨーロッパチャンピオンを決める試合前の熱狂の中で聞くと、演出としては胸ときめく迫力あるものになる。イビチャ・オシム氏は参拝者にとっての大聖堂のパイプオルガンのようなもの、と形容していた。2010年のワールドカップはこのオランダ対スペインの試合をもって幕を閉じる。ここまで63試合を見てきて感じることはいろいろあった。その頂点となる64試合目はどんなことを表現するのだろう。ヨハネスブルグ、サッカーシティー(87600人収容)で行なわれる最終試合。


現地07.11 決勝戦

20:30(12日3:30日本時間)    オランダ 対 スペイン 0−1 (ヨハネスブルグ/サッカーシティ)

試合の前にクロージング・セレモニーがあり、ピッチいっぱいのスクリーンに様々な映像が映し出されたり、アフリカ各地からのグループによる歌と踊りのパフォーマンスがあったり、シャキーラによるアンセム「Waka Waka」が歌われたりした。最後にカートに乗ったマンデラ元大領頭領が笑顔で手を振りながら現われ、ピッチ中央を通り抜けスタンドの大歓声を受けていた。試合は最初スペインのリズムで進むように見えたが、中盤あたりで互いにボールカットが多くなり、見せ場の少ないまま前半を終わった。ファールが多く、ときに危険なプレイもあり、カードがたくさん出された。主審はハワード・ウェブ(英)だった。後半徐々にスペインのペースになっていって、決定機も作っていたが得点には結びつかず、オランダは引いて守るようになり、カウンターからの攻撃をしかけることに終始した。ロッベンがゴール前に走り込んでGKと一対一になる決定的場面も2度あったが、カシージャスの素晴らしいセーブが得点を許さなかった。0−0のまま90分が過ぎ、延長戦に入る。終盤にシャビアロンソに代わって入っていたセスクがたびたびチャンスを作るが得点はなし。延長戦後半ビジャに代わってトーレスが入るが、相変わらず表情は冴えなかった。デルボスケ監督はなぜトーレスを入れたのだろう。108分、オランダに退場者が出る。たびたびペナルティエリアに入り込むイニエスタへのファール、イエローの累積だった。オランダ陣地でのスペインのプレイが続く中、116分、トーレスが中に入れたボールがクリアされセスクの前に、セスクからのパスを受けたイニエスタがついにゴールを決める。カメラがGKカシージャスの表情を捉えた。顔をグローブで被い叫びながら泣いているように見えた。残り時間数分、オランダは反撃することはできなかった。

表彰式でブラッター会長、ズマ大統領から受け取ったワールドカップを、スペインチーム主将のカシージャスが高く空にかかげると、その瞬間を待ち構えていた選手たちの喜びが爆発した。スペインはこのワールドカップの初戦をスイスに負けて落とした。優勝候補の筆頭だったスペインの敗戦は人々を驚かせた。理想とされる美しいサッカーをするチームとしてスペインは一番人気だったが、エースFWのトーレスの不調もあり、今ひとつ絶対的な強さが見られなかった。それでも自分たちのプレイスタイルを貫き周到な準備で試合に臨み、最後には世界一の、そしてスペイン初のW杯トロフィーを獲得した。

ドキュメント<2010年南アフリカの小宇宙> サッカーW杯全試合観戦記

大会25日目 2010.07.11(Sun.) 

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